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BMWのデザインがひどい理由は?巨大グリルの正体と最新動向

神崎悠真

神崎 悠真(1級自動車整備士)                       元大手メーカー勤務。現在は高級車を中心に扱う現役のメカニック兼、自動車検査員です。このブログでは、カタログのスペック表には載っていない**「故障リスク」や「本当の資産価値」**について、整備士の視点から忖度なしで解説します。                                  車選びで失敗したくない方は、ぜひ私の経歴をご覧ください。                                             資格一覧                                         自動車整備士一級、自動車検査員、中古自動車査定員、低圧電気取扱者、大型自動車第一種運転免許、中型自動車第一種運転免許、準中型自動車第一種運転免許、普通自動車第一種運転免許、牽引自動車第一種運転免許証、甲種危険物取扱者、ガス溶接技能講習修了証、全工協主催 基礎製図検定・機械製図検定、全工協主催 情報技術検定、フォークリフト運転技能講習修了証(最大荷重1t以上)、半自動溶接適格性証明書専門級、玉掛け技能講習修了証、床上操作式クレーン運転技能講習修了証(つり上荷重5t以上)、産業車両整備技能士特急、ジュニアマイスターゴールド認定

はじめまして! このブログ「プレミアムカージャーナル」の運営責任者であり、現役の整備士を務めております、神崎悠真(かんざき ゆうま)と申します。

最近の新型車を見ていると、正直なところbmwのデザインがひどいと感じてしまう瞬間があるかもしれませんね。ネット上でもbmwのグリルがダサいといった厳しい意見や、特にbmwの4シリーズのグリルやナンバープレートの配置が気になるという声をよく見かけます。

中にはbmwがビーバーの歯みたいだなんて例える人もいて、今のbmwのデザイナーは誰なの?と疑問に思うのも無理はありません。

ドマゴイ・デュケシュの評判やbmwのデザインと中国市場の深い関係、そしてこれからのbmwの次期デザインやノイエクラッセのグリルがどう進化していくのか、車好きの整備士としての視点を交えながら分かりやすくお伝えします。この記事を読めば、なぜBMWがあえてこの形を選んだのか、その意外な理由が見えてくるはずですよ。

BMWの新型4シリーズの巨大なキドニーグリルのアップ画像と、現役整備士がデザインの謎を解明するという導入スライド。

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記事のポイント

  • 巨大なキドニーグリルが採用された戦略的な背景とブランドの意図
  • デザイン責任者のドマゴイ・デュケシュ氏が貫く独自の哲学と狙い
  • 中国市場のニーズが現在のデザインに与えている具体的な影響
  • 次世代モデル「ノイエ・クラッセ」でBMWが目指す新しい姿

BMWのデザインがひどいと言われる背景と不満の正体

  • BMWのグリルがダサいと批判される具体的な要因
  • BMWの巨大キドニーグリルが視覚に与えた衝撃
  • 4シリーズのグリルやナンバープレートへの美的懸念
  • BMWがビーバーの歯とネットで比喩される造形の真相
  • 現在のBMWのデザイナーは誰か?開発を主導する人物
  • ドマゴイ・デュケシュの評判と他にはない独自の哲学

BMWのグリルがダサいと批判される具体的な要因

BMWといえば、古くからのファンにとっては「羊の皮を被った狼」のような、端正なセダンに圧倒的な走行性能を秘めた姿が理想でした。しかし、ここ数年の新型車、特にフロントマスクの大胆な変貌を見て、BMWのグリルがダサいと声を上げる人が後を絶ちません。

整備士として多くのモデルに触れてきた私から見ても、この変化は「進化」という言葉だけで片付けるにはあまりにも急進的だったかなと思います。

最大の要因は、長年守られてきた「黄金比」の崩壊にあります。かつてのBMWは、左右に伸びるヘッドライトと、中央に鎮座するコンパクトなキドニーグリルが水平方向のラインを強調し、車全体を低く、広く見せる効果を生んでいました。ところが最新モデルでは、グリルが垂直方向に伸び、バンパーの最下部まで達しています。

これにより、視覚的な重心が中央に寄りすぎてしまい、フロントマスクが「分厚く、重苦しい」印象になってしまったんですね。また、キドニー(腎臓)という愛称が馴染まないほど角張ったデザインも、クラシカルな美学を重んじる層からは「品がない」と映っているようです。この「伝統的なバランスの破壊」こそが、多くのユーザーが抱く強い違和感の正体だと言えるでしょう。

従来のBMW3シリーズ(水平基調)と新型4シリーズ(垂直基調)のデザインを比較し、黄金比の崩壊と押し出しの強さを説明するスライド。

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時代背景による「威厳」の履き違え?

現代の自動車業界では、SUVブームの影響もあり、どのメーカーも「押し出しの強さ」を強調する傾向にあります。BMWもその波に乗り、プレミアムブランドとしての威厳をグリルの大きさで表現しようとしたのかもしれません。しかし、古くからのファンが求めているのは、威圧感ではなく「知的なスポーティーさ」なんですよね。

整備の現場でお客さんと話していても、「昔の3シリーズ(E46型など)のようなシュッとした顔が良かった」という嘆きを耳にすることが本当に多いです。このユーザーが求める理想と、メーカーが提示する新しい贅沢の形の「ズレ」が、批判を加速させている一因かなと感じています。

デザイン変更に対する市場の反応


これまでの「調和」を重視するスタイルから、一部の層を強烈に引き付ける「主張」のスタイルへ。この大きな舵取りが、保守的なファンにとっては「改悪」と捉えられてしまっているのが現状です。まさに、ブランドアイデンティティの再定義に伴う大きな「痛み」と言えるでしょう。

BMWの巨大キドニーグリルが視覚に与えた衝撃

2020年、新型4シリーズがそのベールを脱いだ時、フロントに鎮座していたのは想像を絶するBMWの巨大キドニーグリルでした。それまでも大型化の兆しはありましたが、まさか上下を完全に貫通するような形になるとは、多くの人が予想だにしていなかったはずです。

私も初めて実車をピットに迎え入れた時は、「これは板金修理の際にも相当なインパクトがあるな……」と、その構造の複雑さと圧倒的な面積に圧倒されたのを覚えています。吸気効率という機能面以上に、ブランドを誇示するための「広告塔」としての役割が強まった瞬間でした。

この巨大化は、単なる表面的な造形にとどまりません。車両全体のプロポーションにまで影響を及ぼしています。グリルが大きくなることで、エンジンフードのラインは高くなり、サイドから見た時のノーズ部分の厚みが増しました。かつての「ロングノーズ・ショートデッキ」が持つ流麗さよりも、「重厚なモノリス(石柱)」のような塊感が際立つようになったのです。

特にM3やM4といったハイパフォーマンスモデルでは、このグリルが冷却性能の向上に寄与しているという説明もありますが、それでもなお「機能のための形」というよりは「目立つための形」としての側面が強く感じられ、それが多くのファンに戸惑いを与えたのは間違いありません。

機能と演出のギャップ

最近のBMWは、EV(電気自動車)モデルのiXやi7でもこの巨大グリルを維持しています。EVには内燃機関のような大量の冷却風は必要ないため、本来ならグリルは小さくても良いはず。しかし、BMWはあえて巨大なパネルを設置し、その中に先進的なセンサーやカメラを配置する「Shy Tech」という手法を採用しました。

つまり、グリルはもはや「空気の入り口」ではなく、「ハイテクのショーケース」へと役割を変えたわけです。この機能のパラダイムシフトが、従来の車好きの理解を超えた「異質さ」を生み出し、視覚的なショックとして突き刺さっているのだと思います。

BMWのグリルの内部にあるLiDAR、ミリ波レーダー、カメラなどのセンサー類を示し、巨大化の目的がスペース確保であることを説明するスライド。

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整備士の視点:グリルの巨大化とメンテナンス


巨大グリルの裏側には、無数のセンサーや配線が張り巡らされています。見た目は派手ですが、軽い接触でもセンサーのキャリブレーション(調整)が必要になるなど、維持管理の面では以前よりも繊細な扱いが求められるようになっています。美しさと機能の維持には、それなりの手間もかかるということですね。

4シリーズのグリルやナンバープレートへの美的懸念

特に日本のユーザーから熱い(そして厳しい)注目を浴びているのが、4シリーズのグリルやナンバープレートの配置問題です。このモデルが採用した縦に長いキドニーグリルは、中央部分に水平なラインがほとんど存在しません。そのため、日本の四角いナンバープレートを装着すると、せっかくの垂直ラインをぶった切るような形になり、非常にバランスが悪く見えてしまうんですね。

この問題については、オーナーの間でも「どうにかしてかっこよく見せられないか」という議論が絶えません。詳しくは、こちらのBMW 4シリーズは不評?整備士が教える評価の真実と後悔しない選び方でも深掘りしていますが、やはり日本市場特有の悩みがここにはあります。

欧州のプレートは横に細長いため、グリルの下部に配置すれば造形を邪魔しにくいのですが、日本のプレートは高さがあるため、どうしてもグリルのど真ん中に「板が貼り付いている」ような見た目になります。

整備の現場でも、「ナンバーの台座を加工して少しでも印象を変えたい」というオーダーをいただくことがありますが、近年の車両はフロントカメラやレーダーの検知範囲が厳密に設定されているため、安易に位置をずらすことができないのが非常に心苦しいところです。

この「世界共通のデザインと日本の法規制の不整合」が、日本でBMWのデザインがひどいと言われる象徴的な火種になっているのは間違いありません。

欧州の横長プレートと日本のナンバープレートをBMWの巨大グリルに装着した際の比較画像。日本のプレートが垂直ラインを分断する様子を説明。

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日本独自のカスタム文化との葛藤

日本の車文化では、ナンバープレートの位置を少し下げる、あるいは角度をつけることでスマートに見せる手法が好まれてきました。しかし、この最新のグリルは「動かせる余地」がほとんどありません。メーカーが提示した完璧(と思われている)な造形の中に、無骨なプレートを置かなければならないジレンマ。

これが、愛車をカスタマイズして楽しみたい層にとっても、大きな壁として立ちはだかっています。機能美を追求するBMWだからこそ、各国のプレート事情に合わせたデザインの最適化を期待したくなるのがファンの本音ですよね。

地域 ナンバープレートの形状 4シリーズとのデザイン相性
ヨーロッパ 横に非常に細長い ◎ グリルの縦ラインを阻害しにくい
アメリカ(一部) 装着義務なし、または横長 ○ 造形がストレートに伝わる
日本 正方形に近い横長、厚みあり × グリルの中央を遮り、分断感が出る

BMWがビーバーの歯とネットで比喩される造形の真相

ネット上の掲示板やSNSを眺めていると、新型BMWをBMWがビーバーの歯のようだと表現する書き込みをよく見かけます。これは決して日本だけの現象ではなく、海外のフォーラムでも「Beaver Teeth」や「Big Teeth」としてミーム化されています。なぜ、ここまで皮肉な比喩が定着してしまったのでしょうか。

その真相を辿ると、単なる悪口ではなく、人々の潜在意識に「特定の生物的な違和感」を植え付けてしまう造形的な特徴が見えてきます。

縦に長く伸びた2枚のキドニーグリルは、その左右のセパレート具合と中央への集中した配置が、ちょうどビーバーやウサギといった齧歯類の前歯を連想させてしまうんですね。かつてのBMWグリルは「豚の鼻」と言われることはあっても、どこか愛嬌がありました。

しかし今のデザインは、シャープなヘッドライトとの組み合わせが「怒った動物の顔」のように見え、そのアンバランスさが「違和感としてのインパクト」を強烈に残してしまいます。整備士として車に向き合う際も、ヘッドライトを「目」、グリルを「口」と見立てて表情を読み取ることがありますが、今のBMWの表情は、私たちが慣れ親しんだ「車の顔」の定義を大きく踏み越えてしまったのかもしれません。

あえて「嫌われる勇気」を持ったデザイン?

しかし、この「ビーバーの歯」という揶揄さえも、実はBMWの戦略のうちではないかという説もあります。今の時代、最も恐ろしいのは「無関心」です。何の特徴もない綺麗なデザインは、SNSのタイムラインで一瞬で流されてしまいます。しかし、ビーバーの歯と叩かれるほどの個性があれば、それは瞬く間に拡散され、世界中の人の記憶に刻まれます。

整備の現場でも、「最初は絶対買わないと思っていたけど、ずっと見てたらこれじゃないと満足できない体になっちゃった(笑)」と話すオーナーさんが実在します。この「拒絶から中毒への反転」を狙った毒のあるデザインこそが、この比喩の裏に隠された真の狙いなのかもしれません。

ネットで比喩が拡散される理由


・視覚的に分かりやすく、誰でも一言で説明できる特徴
・「カッコいい」という同調よりも、「変だ」という批判の方がSNSでバズりやすい
・一度そう見えると、もうそれ以外には見えなくなる心理的効果

現在のBMWのデザイナーは誰か?開発を主導する人物

これほどまでに過激な方向転換を主導しているのは一体どのような人物なのでしょうか。多くのファンがBMWのデザイナーは誰なのかという疑問を抱く背景には、「この急進的な変化は、ある特定の人物の強いエゴによるものではないか?」という推測があるように思います。

現在のBMWグループ全体のデザインを統括しているのは、オランダ出身のアドリアン・ファン・ホーイドンク(Adrian van Hooydonk)氏です。そして、BMWブランドそのもののデザインを直接的に牽引しているのが、クロアチア出身のドマゴイ・デュケシュ(Domagoj Dukec)氏です。

デュケシュ氏は、現在の「巨大グリル路線」の旗振り役として知られています。彼は、フォルクスワーゲンやシトロエンなどの名だたるメーカーでキャリアを積んできた、超一流のデザイナーです。

整備の現場から見ても、彼が手掛ける車両の細部のディテール――プレスラインの繋ぎ目や、パネル同士のチリ(隙間)の精度など――は非常に緻密で、決して「適当に描いた」ものではないことが分かります。

彼は、BMWというブランドが「革新的であること」を宿命付けられていると信じており、「過去のコピーを作ることはデザイナーの仕事ではない」という強いプライドを持ってペンを握っています。私たちが「ひどい」と感じている変化は、彼にとっては「未来に向けた必然の進化」なんですね。

BMWブランドデザイン責任者のドマゴイ・デュケシュ氏の紹介と、「良いデザインは必ずしも綺麗である必要はない」という彼の哲学を記したスライド。

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伝統と革新のせめぎ合い

BMWのデザイン史を振り返ると、常に論争の的となるデザイナーが登場します。2000年代初頭にクリス・バングル氏が提示した「バングル・バット」も、当時は世界中で猛烈な批判を浴びましたが、結果としてその造形は後の自動車デザインのスタンダードになりました。

ホーイドンク氏やデュケシュ氏も、おそらく自分たちが今「歴史の悪役」として叩かれていることを自覚しているでしょう。しかし、彼らは「批判が起きるということは、それだけ新しい価値を提示できている証拠だ」と前向きに捉えているようです。トップブランドの重責を担う彼らの視点は、数年先ではなく、10年後の路上を見据えているのかもしれません。

デザイナーたちの意外な一面

ドマゴイ・デュケシュ氏は、実は非常に論理的な人物として知られています。インタビューでも、「なぜこのラインを引いたのか」「なぜこのサイズにしたのか」という問いに対し、歴史的背景や将来の技術展望を交えて淀みなく答えます。感情だけでデザインを決めているわけではないことが、彼の言葉から伝わってきます。

ドマゴイ・デュケシュの評判と他にはない独自の哲学

最新のBMWデザインを語る上で避けて通れないのが、ドマゴイ・デュケシュの評判です。正直なところ、ネット上の評判は「ブランドを壊した元凶」という手厳しいものから、「退屈な業界に風穴を開けた天才」というものまで、極端な二極化を見せています。しかし、彼が掲げる独自の哲学を知ると、この巨大グリルが決して「迷走」ではないことが理解できるはずです。

彼の哲学の根底にあるのは、「良いデザインとは、必ずしも綺麗である必要はない(Good design is not about being pretty)」という衝撃的な言葉です。

デュケシュ氏によれば、現代の車はどれも「洗練」されすぎていて、どれを見ても同じように美しい。しかし、プレミアムブランドであるBMWが目指すべきなのは、万人受けする「美しさ」ではなく、一部の人を狂おしいほど熱狂させる「大胆さ(Boldness)」なのだそうです。

彼は「市場の20%の人が、このデザインを死ぬほど愛してくれれば、ビジネスとして、そしてブランドとして勝ちだ」と断言しています。整備士として日々の業務をこなしていても、万人に好かれる無難な車は、時として整備する側の記憶にも残りにくいものです。

しかし、今のBMWのように「強烈なエゴ」を感じさせる車は、触れているだけでエンジニアの熱量が伝わってくるような気がします。この「20%の熱狂」を狙い撃ちする戦略こそが、デュケシュ氏の真骨頂なんです。

人々の反応グラフを用いて、従来の「多くの人がまあまあ好き」なデザインから「20%の熱狂」を狙うBMWの戦略を解説するスライド。

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「Eternal Love(永遠の愛)」へのコミットメント

彼は、一目見て「カッコいい」と消費されるだけのデザインを嫌います。むしろ、最初は「なんだこれは?」と違和感を覚え、そこから時間をかけて理解を深め、最終的に一生離れられないほどの愛着を感じる。そんな「Eternal Love」こそが、高級車に相応しい価値だと考えています。

実際に、現在のデザインに魅了されてBMWに乗り換える新規顧客が増えているというデータもあり、彼の評判は「販売実績」という最も残酷で正確な指標によって、徐々に正当化されつつあります。批判を恐れず、自分たちの信じる「強さ」を貫き通す。彼の哲学は、もはやデザインの枠を超えた「経営哲学」と言ってもいいかもしれません。

ドマゴイ・デュケシュが大切にする3つの軸

・「個性(Character)」:他のどの車とも似ていないこと
・「自信(Self-confidence)」:自分たちがトレンドリーダーであるという自負
・「体験(Experience)」:形ではなく、その車が醸し出すオーラや雰囲気

BMWのデザインは本当にひどいのか?急成長する裏側

  • BMWのデザインと中国市場の密接な関係性を探る
  • 中国市場の影響がBMWの造形変革をもたらした理由
  • ノイエクラッセのグリルが提示する次世代の方向性
  • BMWの次期デザインと進化するデジタル技術の融合
  • よくある質問
  • 総評としてBMWのデザインがひどいという評価を考察

BMWのデザインと中国市場の密接な関係性を探る

現在のデザイン路線を語る際、最も重要なキーワードとなるのが「マーケット」です。特に、BMWのデザインと中国市場の密接な関係を抜きにしては、今の巨大グリルの謎は解けません。今や中国はBMWにとって、本国ドイツやアメリカを遥かに凌ぐ世界最大の単一市場となっています。

2024年のデータを見ても、その販売ボリュームはブランド全体の運命を左右するほど巨大です。経営の観点から言えば、最も多くの車を買ってくれる地域の好みにデザインを最適化するのは、至極真っ当な判断と言えます。整備士仲間の間でも、「今のBMWはアジアの夜の街によく映えるよね」という意見がよく出ますが、それは狙い通りなわけです。

中国のプレミアムカー購入層は、欧米や日本に比べて驚くほど若く、平均年齢は30代半ばから40代と言われています。彼らにとって車は、自分自身の成功を誇示し、ステータスを示すための「最も分かりやすい道具」です。そのため、控えめで知的なエレガンスよりも、圧倒的な威厳と、一目で「BMWの高級車だ」と分かる主張の強さが求められます。

巨大なグリルや煌びやかな光の演出は、こうした「力強い自己表現」を求める巨大市場のニーズに対する、BMWなりの全力の回答なんですね。私たちが日本で感じる「ひどい」という感覚は、実は世界最大のマーケットの「カッコいい」という熱狂に押し流されているだけなのかもしれません。

グローバル企業としての「選択と集中」

もちろん、BMWも日本や欧州のファンを切り捨てたいわけではないはずです。しかし、限られた開発リソースの中で、どこに重きを置くか。BMWは迷わず、成長著しい中国市場の好みに「全振り」することを選びました。この決断は非常に冷徹ですが、企業として生き残るための合理的な判断でもあります。

実際、BMWグループの公式発表によれば、デザイン論争が最も激しい中でも、中国市場を含む主要地域での売上は非常に堅調であり、この戦略が商業的に大成功を収めていることが分かります。

(出典:BMW Group『BMW Group Annual Report 2024』 https://www.bmwgroup.com/en/investor-relations/financial-reports.html

中国市場の影響がBMWの造形変革をもたらした理由

では、具体的に中国市場の影響がどのような形でデザインの細部に反映されているのでしょうか。中国の文化において、「顔(フロントマスク)」の大きさは、その車が持つエネルギーや権威の象徴と捉えられます。かつての皇帝の宮殿の門が巨大であったように、高級車にも「門構えの立派さ」が求められるんですね。

これが、グリルがバンパーを突き抜けて巨大化した最大の理由の一つです。さらに、中国の富裕層は後部座席の快適性も非常に重視するため、車体全体の厚みが増し、それに合わせてグリルのサイズもスケールアップしていったという背景もあります。

また、最近のBMWでよく見られる「グリル周囲をLEDで光らせる(アイコニック・グロウ)」演出も、中国市場のリサーチから生まれたと言われています。夜の上海や北京の煌びやかなネオンの中でも、圧倒的な存在感を放つためには、自らが発光することが最も効果的だからです。

整備士としてこの光るグリルを点検していると、単なる照明パーツというよりは、まるで「最高級の宝飾品」のような輝きを放っていることに驚かされます。日本的な「わびさび」や「控えめな美」とは対照的な、足し算による豪華絢爛な世界観。これこそが、中国という巨大なパワーが生み出した、新しいBMWの姿なんです。

ちなみに、BMWの売れ行きについてはBMW 1シリーズ新型はなぜ売れない?不人気の理由と賢い選び方という記事もありますが、上位モデルに関してはデザインが派手になればなるほど、世界的には支持を集めているという皮肉な逆転現象も起きています。

中国市場と日本市場でのBMWデザイン要素(巨大グリル、発光グリル)の捉え方の違いを比較した表形式のスライド。

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デザイン要素 中国市場の捉え方 日本市場の捉え方
巨大グリル 威厳・パワーの象徴 威圧的・バランスの欠如
グリル発光 先進性・煌びやかな贅沢 過剰な演出・少し下品
複雑な面構成 最新技術の証明・高い加工技術 騒がしい・落ち着きがない

ノイエクラッセのグリルが提示する次世代の方向性

今、「ひどい」と叩かれている巨大グリルも、実はBMWの長い歴史の中では、ある大きな転換点へ向かうための「布石」に過ぎません。その本当の答えは、次世代EVプロジェクトである「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」に示されています。発表されたコンセプトカー、ノイエクラッセのグリルを見ると、これまでの「巨大な穴」という概念が完全に消え去っていることに気づくはずです。

代わりに現れたのは、フロントエンドいっぱいに広がる、ヘッドライトと一体化したデジタルスクリーンです。

これは、今の物理的な巨大さが、次世代では「デジタルな体験」へと置き換わることを意味しています。現在の巨大グリルに対する批判の多くは、「あまりにも物理的な主張が強すぎる」という点に集中しています。BMWはそれを理解した上で、あえて一度極端な巨大化を経験させ、その後に「光と映像による洗練された表現」へと着地させるシナリオを描いているようです。

整備の観点から見ても、これからは「グリルの隙間の汚れを掃除する」時代から、「グリルのソフトウェアをアップデートする」時代へと変わっていくでしょう。この未来的なアプローチは、現在の論争を一気に過去のものにしてしまうほどのポテンシャルを秘めています。

「1960年代の原点」への回帰

ノイエ・クラッセという名前自体、1960年代にBMWを経営危機から救った伝説的なセダンへのオマージュです。当時のデザインもシンプルかつ機能的で、今の過剰な装飾とは無縁でした。次世代モデルでは、その「削ぎ落とした美学」が再び復活しようとしています。巨大グリルという「毒」を一度出し切った後に、究極のクリーンなデザインへ。

この「揺り戻し」の美学こそが、BMWが世界に提示する次なるサプライズなんです。今のデザインに納得がいかない方も、このノイエ・クラッセの姿を見れば、BMWが何を目指して「今」を戦っているのか、少しだけ納得できるかもしれませんよ。

神崎悠真の技術解説:ノイエ・クラッセのすごさ


次世代グリルには、ただ光るだけでなく、周囲の歩行者に「お先にどうぞ」とサインを出したり、充電状況をアニメーションで見せたりする機能が検討されています。デザインが「形」から「コミュニケーションツール」に変わる瞬間を、私たちは目撃することになりそうです。

BMWの次期デザインと進化するデジタル技術の融合

これからのBMWの次期デザインにおいて、主役となるのはもはや鋼鉄や樹脂ではなく、高度なプログラミングとセンサー技術です。BMWが今、批判を覚悟でグリルを巨大化させている真の目的は、そこに「車の脳」とも言える最新のハードウェアを隠すためのスペースが必要だったからに他なりません。

これをBMWは「Shy Tech(シャイ・テック)」と呼んでいます。一見するとただの巨大なプラスチックの板に見えるグリルですが、その裏側には、ミリ波レーダー、高解像度LiDAR、そして数基のカメラが「目」として統合されています。

自動運転のレベルが上がるにつれ、車は周囲の環境を360度、ミリ単位で把握しなければなりません。かつてのスマートなデザインでは、これらの無骨なセンサー類を隠すことができませんでした。しかし、今の巨大グリルであれば、それらすべてをスマートに覆い隠し、かつデザインの一部として機能させることができます。

次期モデルでは、この技術がさらに進化し、グリル自体にヒーターを内蔵して降雪時のセンサー凍結を防いだり、微細な傷を自分で修復する特殊塗装が施されたりする予定です。

こうした進化の過程を見ると、あの近未来的なスーパーカー、bmw i8に乗ってる人の実態でも語られたような、既存の枠に囚われない先進的なモノづくりの精神が、今のBMW全体に浸透していることがよく分かります。

「デジタル・ツイン」という新しいデザインの形

また、次期デザインでは「車外と車内の境界」がデジタル技術によって溶け合っていきます。例えば、フロントウィンドウ全体をディスプレイ化する「BMW パノラマ・ビジョン」は、グリルのデジタル表示と連動し、ドライバーに直感的な情報を伝えます。

外見のデザインが単なる「ガワ」ではなく、「高度なコンピューティング空間の延長」として設計される。整備士としてこのデジタル化の波を目の当たりにしていると、これからは「形を愛でる」だけでなく「システムを使いこなす」ことが、BMWを選ぶ最大の理由になっていくのだと痛感します。

次期デザインを構成する「3つのデジタル柱」

・Shy Tech:ハイテクをデザインの裏側に隠し、純粋な造形美を保つ
・Phygital(フィジタル):物理(Physical)とデジタル(Digital)の融合
・Sustainability:リサイクル可能な新素材を多用し、エコとラグジュアリーを両立

よくある質問

Q:なぜ最近のBMWは、これほどまでにグリルが巨大化したのですか?

A:最大の理由は、最大市場である中国での「威厳」や「存在感」への強いニーズに応えるためです。また、グリルの裏側に自動運転用の最新センサーを集約させる「Shy Tech」という機能的な目的も兼ね備えています。

Q:ネットで「ひどい」と言われるデザインは、販売に悪影響を与えていないのですか?

A:意外にも、販売実績は非常に堅調です。デザイン責任者のデュケシュ氏は「100%の人に好かれる平凡な車より、20%の人に熱狂的に愛される大胆さ」を重視しており、その戦略がターゲット層には正しく刺さっています。

Q:日本のナンバープレートがグリルを台無しにしているという声については?

A:4シリーズなどの垂直グリルを日本の横長プレートが分断してしまう点は、日本独自の法規制との不整合によるものです。センサー位置の制約上、安易に移動できないことが美的懸念を生む要因となっています。

Q:この巨大グリル路線は今後もずっと続くのでしょうか?

A:次世代EV「ノイエ・クラッセ」では、物理的な巨大グリルからデジタルスクリーンへと進化する予定です。現在の巨大化は過渡期の表現であり、今後は「デジタル体験」を軸にした洗練された姿へとシフトしていきます。

総評としてBMWのデザインがひどいという評価を考察

さて、ここまで長々と語ってきましたが、最終的にbmwのデザインがひどいという評価をどう受け止めるべきでしょうか。現役の整備士として、毎日何台ものBMWに触れ、オーナーさんたちのリアルな喜びと嘆きの両方を聞いている私なりの結論をお話しします。

正直なところ、今のデザインは「BMWが自らの殻を破り、新しい時代のリーダーとして君臨するための通過儀礼」なのだと思います。

確かに、過去の名車を知る人ほど、今の過激な姿には拒絶反応が出るでしょう。しかし、自動車業界は今、100年に一度と言われる大変革期にあります。テスラのような新興勢力が台頭し、既存の価値観が次々と崩れ去る中で、BMWが選んだのは「伝統を守りながら緩やかに衰退する」ことではなく、「批判を恐れずに全く新しい価値観を提示する」ことでした。

ネットでどれほど「ひどい、ダサい」と言われようとも、実際にディーラーに足を運び、あの巨大なグリルを誇らしげに見つめながら新車のキーを受け取るお客さんは後を絶ちません。販売台数という揺るぎないデータが、この「挑戦的なデザイン」がターゲット層には正しく刺さっていることを証明しています。

整備士の私が確信を持って言えるのは、外見がどんなに変わろうとも、ドアを閉めた時の剛性感や、アクセルを踏み込んだ瞬間の加速、そして意のままに曲がるハンドリング性能――これら「BMWの本質」は、今も世界最高峰のレベルにあります。

整備士がボンネットを開けたBMWを見つめる画像と、デザインの変化はBMWの新しい正解であり通過儀礼であるという結論を記したスライド。

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この記事の最終的なチェックリスト

  • 「ひどい」と感じる理由:私たちの脳が、まだBMWの「新しい正解」に追いついていないから
  • 中国市場の影響:世界最大のマーケットが求める「力強さ」を具現化した結果
  • デザインの本質:巨大グリルは、最新のセンサー技術とブランドの誇りを統合した必然の形
  • 今後の展望:ノイエ・クラッセによって、デザインは「物理的な大きさ」から「デジタルな体験」へと進化する

もしあなたが今のBMWを「嫌い」だと思うなら、それはあなたがBMWというブランドを深く愛し、明確な理想を持っている証拠です。でも、もし機会があれば、一度だけでいいので実車に乗ってみてください。

その「ひどい」と思っていた顔が、圧倒的な走りの良さを体感した瞬間に、「唯一無二の相棒の顔」に見えてくる……そんな不思議な体験が、BMWにはあるんです。整備士として、あなたが最高の相棒に出会えることを心から応援しています!

※本記事は、筆者自身の経験と公開された情報を元に構成した個人的な見解です。デザインの好みは人それぞれであり、正解はありません。最新の車両情報や詳細なスペック、購入に関するご相談は、必ずBMW正規ディーラーのスタッフにお尋ねください。また、掲載している数値データ等は、2025年現在の一般的な目安であることをご了承ください。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました! あなたのカーライフが、もっと刺激的で楽しいものになりますように。また次の記事でお会いしましょう!

未来の街を走るBMWのコンセプトカーと、デザインを構成する3つの柱(シャイ・テック、フィジタル、サステナビリティ)をまとめた最終スライド。

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神崎悠真

神崎 悠真(1級自動車整備士)                       元大手メーカー勤務。現在は高級車を中心に扱う現役のメカニック兼、自動車検査員です。このブログでは、カタログのスペック表には載っていない**「故障リスク」や「本当の資産価値」**について、整備士の視点から忖度なしで解説します。                                  車選びで失敗したくない方は、ぜひ私の経歴をご覧ください。                                             資格一覧                                         自動車整備士一級、自動車検査員、中古自動車査定員、低圧電気取扱者、大型自動車第一種運転免許、中型自動車第一種運転免許、準中型自動車第一種運転免許、普通自動車第一種運転免許、牽引自動車第一種運転免許証、甲種危険物取扱者、ガス溶接技能講習修了証、全工協主催 基礎製図検定・機械製図検定、全工協主催 情報技術検定、フォークリフト運転技能講習修了証(最大荷重1t以上)、半自動溶接適格性証明書専門級、玉掛け技能講習修了証、床上操作式クレーン運転技能講習修了証(つり上荷重5t以上)、産業車両整備技能士特急、ジュニアマイスターゴールド認定

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