はじめまして! このブログ「プレミアムカージャーナル」の運営責任者であり、現役の整備士を務めております、神崎悠真と申します。

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憧れの英国車アストンマーチン故障率や維持費に関するリアルな情報を求めて検索された方の多くは、美しいスタイリングに惹かれつつも、壊れやすいという噂や購入後の後悔を心配されているのではないでしょうか。中古市場での価格がこなれてきた今だからこそ、致命的なトラブルのリスクや注意点を正しく理解しておくことが大切です。
記事のポイント
- アストンマーチン特有の故障傾向とドイツ車との決定的な違い
- DB9やヴァンテージなどのモデル別高額修理費用の目安
- 維持費がポルシェの3倍と言われる具体的な根拠と対策
- 後悔しないために知っておくべき中古車選びと整備工場の選び方
アストンマーチンの故障率と維持費の過酷な現実
- アストンマーチンは壊れやすい?ドイツ車との違い
- DB9やヴァンテージで頻発する高額修理の事例
- ベンツ製エンジン搭載のDB11は信頼性が高いか
- アストンマーチンの維持費はポルシェの約3倍
- 修理予備費として常時200万円が必要な理由
アストンマーチンは壊れやすい?ドイツ車との違い
アストンマーチンの購入を真剣に検討されているお客様から、一番多くいただく質問がこれです。「やっぱりアストンって、すぐ壊れるんですよね?」。
比較対象としてポルシェ911やメルセデス・ベンツのSLクラスなどを挙げられることが多いのですが、現役の整備士としての視点から率直にお伝えすると、アストンマーチンをこれらのドイツ車と同じ「工業製品」の物差しで測るのは少し危険であり、ナンセンスかもしれません。
まず、ドイツ車、特にポルシェやベンツといったブランドが目指しているのは「工業製品としての完璧な均質性と耐久性」です。彼らの設計思想において、故障や不具合は徹底的に排除すべき「異常」であり、数万点の部品が寸分の狂いもなく機能することが当たり前とされています。
例えば、ポルシェに乗っていて「雨漏りがする」とか「内装が勝手に剥がれてきた」なんてことは、事故車でもない限りまずあり得ない話ですよね。
一方で、アストンマーチン、特にVHプラットフォーム世代(DB9やV8ヴァンテージなど)までのモデルは、良い意味でも悪い意味でも「ハンドメイド(手組み)」の要素を色濃く残した工芸品に近い存在です。
アストンマーティンはどこの国のブランドなのか、その歴史的背景や職人文化を知れば、一台一台手作業でアルミパネルを接着し、レザーを縫い合わせるがゆえに生じる「個体差」や「品質のゆらぎ」も、ある程度納得できるかもしれません。

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私たちが日々整備をしていて痛感するのは、アストンマーチンにおける「故障」の性質がドイツ車とは根本的に異なるという点です。エンジンが突然爆発するとか、タイヤが脱落するといった致命的な機械的欠陥は、実はそれほど多くありません。むしろ、オーナー様を悩ませるのは以下のようなマイナートラブルの数々です。
アストンマーチン特有の「故障」の正体
- 内装の浮き・剥がれ: 英国の気候に合わせて選定された接着剤が、日本の高温多湿な環境に耐えられず、ダッシュボードのレザーが縮んだり、天井の内張りが垂れ下がってきたりします。
- 電装系の気まぐれ: センサーの接触不良で警告灯がついたり消えたりする、パワーウィンドウの調整が狂って隙間風が入る、といった「機能はするけど調子が悪い」状態が頻発します。
- 建付けのズレ: トランクやドアのチリ(隙間)が微妙にズレてきたり、ウェザーストリップの密着が悪くなって雨漏りしたりすることがあります。
かつてジェレミー・クラークソンが「ハンドメイドとは、ドアが脱落することを意味する」と冗談交じりに評しましたが、これはあながち間違いではありません。ドイツ車であればクレーム対象となるような事象でも、アストンマーチンの場合は「手作りの味」「英国車の愛嬌」として受け止められるかどうか。
このマインドセットの違いが、オーナーになれるかどうかの最初のハードルだと言えるでしょう。
つまり、アストンマーチンの故障率は、統計的な数値というよりも、オーナー自身の「不完全さに対する許容度」に依存する部分が大きいのです。完璧を求める方にはストレスの塊でしかありませんが、その不完全さすらも愛せる方にとっては、かけがえのないパートナーになり得ます。
DB9やヴァンテージで頻発する高額修理の事例
現在、中古車市場では300万円台から探せるようになったV8ヴァンテージや、500万円台からのDB9など、VHプラットフォーム世代のモデルが現実的な選択肢として人気を集めています。しかし、車両価格が安くなったからといって、修理費用まで安くなったわけではありません。
むしろ、経年劣化が進んだ今だからこそ、私たち整備士の間では「絶対に避けて通れない定番トラブル」が明確になっています。
V12エンジンのイグニッションコイルと「死のダニ」

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DB9、DBS、ラピードなどに搭載される名機、6.0リッターV12エンジン。このエンジンで最も恐ろしいのが、イグニッションコイルの故障によるミスファイア(失火)です。症状としては、「排気ガスシステムの整備が必要です」という警告が表示され、アイドリングがブルブルと震えたり、加速時に息継ぎをしたりします。
「たかがコイル1本の交換でしょ?」と思われるかもしれませんが、アストンマーチンのV12エンジンの場合、構造が非常に厄介です。コイルはインテークマニホールド(サージタンク)の真下に隠れるように配置されており、交換するためにはこれら吸気系の部品をすべて取り外す必要があります。これだけで多大な工賃が発生します。
さらに、1本のコイルが熱でやられたということは、残りの11本も同じ熱履歴を経て寿命が近づいていることを意味します。そのため、工賃を節約するためにも「12本すべてのコイルとスパークプラグ(12本)の同時交換」が鉄則となります。
驚愕の修理費用
部品代だけでも、純正コイル1本あたり2万円〜3万円。それが12本必要です。さらにプラグ代、ガスケット代、そして高額な工賃を合わせると、正規ディーラーや専門店での修理総額は30万円〜50万円コースになることが一般的です。
V8ヴァンテージの「スポーツシフト」トラブル
V8ヴァンテージ(特に2006年〜2012年頃)に多く採用されている「スポーツシフト(Sportshift)」も、オーナー泣かせのシステムです。これはトルコン式ATではなく、マニュアルトランスミッションを油圧アクチュエーターで自動操作する「シングルクラッチ式AMT」です。
構造上、発進時や変速時には半クラッチ状態が発生します。特に日本の渋滞路や、バックでの車庫入れ(半クラッチを多用する場面)が多い環境では、クラッチ板の摩耗が劇的に早まります。クラッチの残量がなくなると、ギアが入らなくなったり、走行不能(不動)になったりします。
また、変速用の油圧を生み出すASMポンプやリレーの故障も定番です。これらが壊れると、ニュートラルからギアが入らなくなり、レッカー移動を余儀なくされます。
クラッチ交換を行う場合、トランスミッションを降ろす大作業となるため、部品代(クラッチディスク、カバー、フライホイール等)と工賃を合わせて、約70万〜90万円という高額請求が発生します。「変速が遅い」「ギクシャクする」と感じたら、それは故障の前兆かもしれません。
ベンツ製エンジン搭載のDB11は信頼性が高いか
「VH世代は壊れるのはわかった。じゃあ、メルセデスAMGと提携してからのDB11なら安心じゃないか?」
そう考えるのは自然な流れですし、実際に多くのお客様からご質問をいただきます。
結論から申し上げますと、「パワートレインの信頼性は飛躍的に向上したが、アストンマーチン独自のトラブルは残っている」というのが正解です。
2016年のDB11以降、アストンマーチンはメルセデスAMGからV8ツインターボエンジン(M177型ベース)と電装アーキテクチャの供給を受けています。
メルセデス・ベンツの親会社であるダイムラー(現メルセデス・ベンツ・グループ)との技術提携は、アストンマーティンにとって大きな転換点でした。このエンジン自体は、数多くのAMGモデルで採用されている実績あるユニットであり、エンジン本体がブローするといった致命的なトラブルは激減しました。
トランスミッションもZF製の8速ATとなり、スポーツシフトのような癖やクラッチ交換の恐怖からは解放されています。
しかし、ここで注意が必要なのは「英国の身体」の部分です。エンジンはドイツ製でも、それをボディに組み付ける工程や、ラジエーターホース、オイルラインなどの補機類の取り回しは、あくまでアストンマーチンの工場で行われています。
そのため、ホースバンドの締め付け不足による冷却水漏れや、パッキンの品質不良によるオイル滲みといった「組み付け起因」のトラブルは依然として存在します。

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電装系の「周回遅れ」問題に注意
もう一つの弱点が、インフォテインメントシステム(ナビやオーディオ)です。メルセデスから供給されるシステム(COMANDシステム)は、車両開発のタイミングの関係で、供給された時点で既に一世代前の規格であることが多いのです。
そのため、最新のiPhoneやAndroid端末とのBluetooth接続で相性問題が出たり、ナビ画面が突然ブラックアウトして再起動を繰り返したりといった、ソフトウェア的な不具合が散見されます。「中身はベンツだから最新の快適さだろう」と思って乗ると、意外な古臭さと不安定さに戸惑うことになるかもしれません。
また、近年のモデルは電子制御の塊であるため、待機電力が非常に大きくなっています。2週間ほど乗らずに放置しただけでバッテリーが上がり、ドアすら開かなくなる(電子ロックのため)というトラブルもDB11以降のモデルでよくある相談です。バッテリー交換もリアシートの脱着が必要などアクセスが悪く、工賃が嵩む傾向にあります。
アストンマーチンの維持費はポルシェの約3倍
これは私の整備士としての経験則に基づく数字ですが、アストンマーチンの維持費を考える際、同年代・同価格帯のポルシェ911(水冷モデル)と比較して、概ね2倍から3倍のコストを見積もっておく必要があると感じています。
「同じようなスポーツカーなのに、なぜそんなに違うの?」と驚かれるかもしれませんが、理由は大きく分けて2つあります。
1. 部品の流通量と選択肢の少なさ
ポルシェ911は世界中で何万台も走っているため、純正部品以外にも「OEM品(純正同等品)」や「社外優良パーツ」が豊富に流通しています。例えば、ボッシュやビルシュタイン、テキストスターといったメーカーの部品を使えば、純正の半額以下で修理できることも珍しくありません。
しかし、アストンマーチンは生産台数が極端に少ないため、サードパーティの部品メーカーが参入するメリットが少なく、社外パーツがほとんど存在しません。修理には高額な純正部品(しかも英国からの空輸が必要な場合も多い)を使わざるを得ず、選択肢がないのです。これが部品代を高騰させる最大の要因です。

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2. 整備性の悪さと工賃の高さ
アストンマーチンの美しいデザインを実現するために、エンジンルーム内はギチギチに詰め込まれています。V12エンジンなどは、手の入る隙間が全くないほどです。
そのため、簡単な部品交換であっても、周辺のパーツを大量に取り外す必要があり、作業時間(工数)がポルシェに比べて圧倒的に長くなります。整備工場では「時間工賃」で請求額が決まるため、結果として工賃が跳ね上がるのです。
さらに、フェラーリとの比較も重要です。近年のフェラーリ(2012年以降のモデル等)には「7年間の無料メンテナンスプログラム(Genuine Maintenance)」が付帯していることが多く、期間内のオイル交換や消耗品交換が無料になります。対してアストンマーチンは基本的にすべて有償メンテナンスです。
そのため、高年式車においては、フェラーリよりもアストンマーチンの方がランニングコストが高くなるという、逆転現象が発生しているのが現実です。
ポルシェとの比較については、ポルシェGT3を買える人の年収や維持費や、ポルシェ・ケイマンに乗る人の実態を解説した記事も参考にしてみてください。ドイツ製スポーツカーがいかに「維持しやすい環境」にあるかが、アストンマーチンと比較することでより鮮明に見えてくるはずです。
修理予備費として常時200万円が必要な理由
私がお客様にアストンマーチンの購入相談を受けた際、必ず真顔でお伝えしているアドバイスがあります。
それは、「車両購入価格とは別に、いつでも自由に使える現金を200万円〜300万円、口座に残しておいてください」ということです。
「えっ、そんなに?」と引かれることもありますが、これは決して脅しではありません。アストンマーチンという車を安心して維持し続けるための「兵站(ロジスティクス)」として、必須の防衛ラインなのです。

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例えば、先ほど挙げたクラッチ交換で90万円。同じ年にエアコンのコンプレッサーが壊れて30万円。さらに車検で消耗品(タイヤやブレーキ)を交換して50万円...となれば、年間で200万円近い出費になることは決して珍しい話ではありません。もしギリギリの予算で購入してしまい、修理代が払えなければ、愛車は整備工場の片隅で「不動車」として何ヶ月も放置されることになります。
さらに、2024年から2025年にかけての円安傾向や、世界的な物流コストの上昇により、アストンマーチンの輸入部品価格は高騰し続けています。数年前までは15万円で済んだ部品が、今では25万円になっているというケースもザラにあります。
※上記の費用はあくまで一般的な専門ショップでの目安であり、正規ディーラーのレートや為替変動により大きく異なる場合があります。
この「200万円の壁」を、万が一の際の「捨て金」として許容できる経済的な余裕があるかどうかが、アストンマーチンオーナーとして幸せになれるかどうかの分水嶺だと言えるでしょう。
アストンマーチンの故障率を理解した中古車購入術
- 中古のアストンマーチン購入時の重要な注意点
- 低走行車こそ危険?放置車両が抱えるリスク
- アストンマーチンを買って後悔する人の共通点
- 専門店の整備で維持費を抑える賢い付き合い方
- よくある質問
- 結論:アストンマーチンの故障率とオーナーの覚悟
中古のアストンマーチン購入時の重要な注意点
ここまで厳しい現実ばかりをお話ししてきましたが、それでもアストンマーチンの魅力は抗いがたいものがありますよね。では、少しでもハズレ個体を引くリスクを下げ、賢く購入するためにはどうすればよいのでしょうか。アストンマーチンの中古車選びは、まさに地雷原を歩くような慎重さが求められます。
写真やスペックシートだけでは分からない、実車確認(プレ・インスペクション)での必須チェックポイントを、整備士の視点でまとめました。販売店に行く際は、ぜひ以下の項目を確認してください。

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【整備士直伝】実車確認チェックリスト
- 冷間始動時のエンジン音: 必ずエンジンが完全に冷えている状態から始動させてもらってください。数分間のアイドリング中に、エンジンルームから「カチカチ」「カタカタ」という規則的な打音(ティック音)が聞こえないか確認します。これはV12エンジンのピストンやライナーのトラブルの予兆で、修理にはオーバーホールが必要です。
- トランスミッションの動作(SS車): スポーツシフト車の場合、リバース(R)に入れた際にすぐにギアがつながるか確認してください。数秒のタイムラグがあったり、大きなショックがあったりする場合は、クラッチや油圧系の不具合が疑われます。
- 内装の縮みと垂れ: ダッシュボードのデフロスター吹き出し口付近を見て、レザーが縮んで捲れ上がっていないか、また天井の内張り(ルーフライニング)が垂れ下がって浮いていないかをチェックします。純正レザーの張り替えは非常に高額です。
- ボディの腐食(ブリスター): ドアハンドルの周辺、ドアの下端、サイドステップ付近の塗装面を斜めから見て、小さな膨らみ(ブリスター)がないか確認しましょう。これはアルミボディ特有の電食による腐食で、再塗装しても再発する可能性が高く、修理難易度が高い症状です。
- ライト類の結露: ヘッドライトやテールレンズの中に水滴や曇りがないか見てください。アストンマーチンのライトユニットは数十万円と高額で、水没による基盤ショートはユニット全交換を意味します。
これらのポイントは、素人目には見落としがちですが、購入後の出費に直結する重要な部分です。「見た目が綺麗だから」という理由だけで即決せず、必ず細かい部分まで目を光らせてください。可能であれば、アストンマーチンに詳しい第三者の専門家やメカニックに同行してもらうのがベストです。
中古車選びの基本的なポイントについては、以下の記事も参考にしてください。
低走行車こそ危険?放置車両が抱えるリスク
中古車サイトを見ていると、「10年落ち・走行距離1万km未満」といった極端な低走行車を見かけることがあります。「あまり走っていないから程度が良いだろう」と考えがちですが、アストンマーチンに関しては、この常識は通用しません。むしろ、私はこういった「極端な低走行車(放置車両)」こそ危険だと考えています。
車は機械ですので、適度に動かしてオイルや冷却水を循環させ、熱を入れてあげないとコンディションを保てません。長期間ガレージで「床の間飾り」のように放置されていた車両は、以下のようなリスクを抱えています。
放置車両(ドライスタート)のリスク
- ゴム類の硬化: エンジン内部のオイルシール、ガスケット、ブッシュ類が油分を失ってカピカピに乾燥・硬化しています。
- 乗り出し後の多重トラブル: 購入して乗り出した途端、エンジンに熱が入ることで硬化したシールが一気に割れ、オイル漏れや水漏れが多発します。「走らせ始めたら急に壊れた」というケースの正体はこれです。
- 燃料系の固着: 古いガソリンが変質し、燃料ポンプやインジェクターを詰まらせたり固着させたりしている可能性があります。
逆に、年間3,000km〜5,000km程度、コンスタントに乗られており、その都度適切なメンテナンス(消耗品交換)を受けてきた「過走行気味」の個体の方が、機関の調子はすこぶる良好であることが多いのです。走行距離の数字にとらわれず、「どのように維持されてきたか」という履歴(整備記録簿)を重視することが、ハズレを引かないためのコツです。
アストンマーチンを買って後悔する人の共通点
私はこれまで、多くのアストンマーチンオーナー様を見てきましたが、残念ながら「買って後悔した」「維持できずにすぐ手放した」という方も少なからずいらっしゃいます。彼らには、いくつかの共通点があります。
最も多いのが、「車両価格の安さに惹かれて、ギリギリの予算で購入してしまった」ケースです。
確かに、初期のV8ヴァンテージやDB9は、国産高級車と同じくらいの価格で購入できるようになりました。しかし、「300万円で買える車」であっても、その車はあくまで「新車時価格1500万円〜2000万円のスーパーカー」です。部品代や整備費は、新車当時の水準(あるいはそれ以上)のままかかります。「車両は安く買えたけど、維持費はスーパーカー並み」という現実を直視できず、最初の車検や修理見積もりを見て心が折れてしまうのです。
次に多いのが、「快適性や利便性を求めすぎた」ケースです。
「ポルシェやAMGのように、毎日通勤や買い物にも使えるだろう」と期待して購入すると、痛い目を見ます。乗り心地は硬く、ナビは使いにくく、エアコンの効きは悪く、渋滞ではクラッチの消耗を気にして冷や汗をかく...。こういった「不便さ」をストレスと感じてしまう方は、アストンマーチンには向いていないかもしれません。
逆に、長く愛し続けているオーナー様は、これらの不便さを「この車の個性」として受け入れ、多少のトラブルも「手間のかかる子ほど可愛い」と笑い飛ばせる余裕を持っています。購入前に、自分の性格や経済状況がアストンマーチンという「魔性の女(あるいは男)」に耐えられるか、自問自答してみることをお勧めします。
専門店の整備で維持費を抑える賢い付き合い方
脅かすようなことばかり言いましたが、維持費を少しでも抑えて、賢くアストンマーチンと付き合う方法は存在します。その最大の鍵となるのが、「整備工場の選定」です。
新車保証(メーカー保証)が残っている車両や、「お金に糸目はつけないから、常に完璧な状態にしておきたい」という方は、迷わず正規ディーラーにお任せするのが正解です。最新の専用テスターと純正部品による整備は、何者にも代えがたい安心感があります。
しかし、保証が切れた古いモデル(VH世代など)を維持する場合、ディーラーの「予防整備・アッセンブリー交換(丸ごと交換)」という方針は、コストが嵩みすぎることがあります。そこで頼りになるのが、アストンマーチンの整備実績が豊富な輸入車専門店(スペシャルショップ)の存在です。
専門店のメリットとは?
経験豊富な専門店には、ディーラーにはない柔軟なノウハウがあります。例えば:
- 現物修理: 部品を丸ごと交換するのではなく、壊れた内部の小さな部品だけを特定して修理してくれる。
- リビルトパーツの活用: 新品部品の代わりに、オーバーホール済みの再生部品(リビルト品)を使って部品代を抑える。
- OEM部品の提案: 純正パッケージに入っていないだけで、中身は同じであるOEMメーカーの部品を探し出してくれる。
こうした提案をしてくれる信頼できる「主治医」を見つけることができれば、維持費をディーラー整備の2/3、あるいは半分近くまで圧縮できる可能性があります。
東京のS-TECHさんや、北海道のオートファクトリーさんなど、全国にはアストンマーチンに精通した素晴らしいショップが存在します。購入前から、自宅近くにそういった頼れるショップがあるかリサーチしておくことも、重要な準備の一つです。
よくある質問
Q:アストンマーチンはドイツ車と比べて壊れやすいですか?
A:エンジンブローなどの致命的な欠陥は少ないですが、ハンドメイド特有の内装剥がれや電装系のマイナートラブルは頻発します。工業製品としての精度が高いドイツ車とは異なり、ある程度の不具合を許容する姿勢が必要です。
Q:アストンマーチンの維持費はポルシェと比べてどれくらい高いですか?
A:概ねポルシェ911の2倍から3倍のコストがかかります。純正部品が非常に高額で社外品の選択肢が少ないためです。安心して維持するためには、車両購入費とは別に常時200万円〜300万円の修理予備費の確保を推奨します。
Q:ベンツ製エンジンを搭載したDB11なら故障しませんか?
A:エンジンの信頼性は飛躍的に向上しましたが、アストンマーチン独自の組み立て工程に起因する水漏れやオイル漏れ、一世代前の規格であるナビシステム等の電装系トラブルのリスクは依然として残っています。
Q:中古車を選ぶ際、走行距離が少ない個体の方が安心ですか?
A:いいえ、極端な低走行車(放置車両)はゴム類が硬化しており、乗り出し後に多重トラブルが発生する危険性が高いため注意が必要です。コンスタントに走行し、定期的にメンテナンスされてきた個体を選ぶことをお勧めします。
結論:アストンマーチンの故障率とオーナーの覚悟
最後に、「アストン マーチン 故障 率」というキーワードでこの記事にたどり着いたあなたへ、私なりの結論をお伝えして締めくくりたいと思います。
正直に申し上げます。アストンマーチンは、故障率だけで見れば間違いなく高い車です。日本車のような信頼性は期待できませんし、維持にはポルシェ以上のコストと手間がかかります。もしあなたが、移動手段としての「合理性」や「コストパフォーマンス」を求めているのであれば、アストンマーチンは絶対に選んではいけない車です。断言します、後悔します。
しかし、その「非合理性」をすべて受け入れ、故障すらも「愛車の機嫌」として付き合う覚悟がある方に対してのみ、アストンマーチンは世界で最も美しい自動車体験を提供してくれます。
ガレージでエンジンをかけた瞬間の、魂を揺さぶるようなV12/V8サウンド。
街中に停めているだけで、誰もが振り返る圧倒的に優美なスタイリング。
そして、コックピットに座り、クリスタルキーを押し込む瞬間の高揚感。
これらは、どんなに壊れにくくて便利な車であっても、決して味わうことのできない「魔力」です。

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「故障は必ずする。金はかかる。手間もかかる。それでも、この美しさが欲しいか?」
この問いに、一瞬の迷いもなく即答で「イエス」と言えるなら、あなたはアストンマーチンの鍵を手にする資格が十分にあります。よく比較されるアストンマーチンとベントレーのロゴの由来や見分け方についても知識を深めつつ、ぜひ、その素晴らしい世界へ一歩踏み出してみてください。その際は、いつでも動かせる余裕資金の準備だけはお忘れなく!
注意
※本記事の情報は、筆者の整備士としての経験および一般的な傾向に基づくものであり、全ての車両に当てはまるわけではありません。特定の車両の状態については、必ず販売店や専門家にご相談ください。最終的な購入・維持の判断は、ご自身の責任にてお願いいたします。