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ポルシェ・カイエンの中古が安い理由は?故障と維持費を現役整備士が解説

神崎悠真

神崎 悠真(1級自動車整備士)                       元大手メーカー勤務。現在は高級車を中心に扱う現役のメカニック兼、自動車検査員です。このブログでは、カタログのスペック表には載っていない**「故障リスク」や「本当の資産価値」**について、整備士の視点から忖度なしで解説します。                                  車選びで失敗したくない方は、ぜひ私の経歴をご覧ください。                                             資格一覧                                         自動車整備士一級、自動車検査員、中古自動車査定員、低圧電気取扱者、大型自動車第一種運転免許、中型自動車第一種運転免許、準中型自動車第一種運転免許、普通自動車第一種運転免許、牽引自動車第一種運転免許証、甲種危険物取扱者、ガス溶接技能講習修了証、全工協主催 基礎製図検定・機械製図検定、全工協主催 情報技術検定、フォークリフト運転技能講習修了証(最大荷重1t以上)、半自動溶接適格性証明書専門級、玉掛け技能講習修了証、床上操作式クレーン運転技能講習修了証(つり上荷重5t以上)、産業車両整備技能士特急、ジュニアマイスターゴールド認定

はじめてまして!このブログ「プレミアムカージャーナル」の運営責任者であり、現役の整備士を務めております、神崎悠真(かんざき ゆうま)と申します。

誰もが一度は憧れる高級SUV、ポルシェのカイエン。中古車情報を見ていると「えっ、こんなに安いの?」と驚くような価格の個体を見かけることがありますよね。でも、いざ買おうとすると、なぜポルシェのカイエンの中古が安い理由があるのか、後でとんでもない修理代がかかるのではないかと不安になる方も多いはずです。

特に、カイエンの故障しやすい場所や、毎月の支払いに響くカイエンの維持費については、事前にしっかり把握しておきたいポイントかなと思います。また、比較的新しいカイエンの958の後期の中古相場や、安心感のあるカイエンの認定中古車の保証についても気になりますよね。この記事では、私が現場で見てきた経験を交えながら、安さの裏にある真実をわかりやすく解説していきます。

記事のポイント

  • カイエンの中古相場が下落する市場のメカニズム
  • 購入前に知っておくべき定番 of 故障箇所と修理費用
  • 税金や燃費など所有し続けるために必要なランニングコスト
  • 失敗しないための認定中古車や個体選びのチェックポイント

ポルシェのカイエンの中古が安い理由を徹底解説

  • 供給過多による需要と供給の不均衡な市場
  • 958後期型と比較して前期型が値崩れする背景
  • 故障しやすい場所と高額な修理費用のリスク
  • 冷却水漏れやトランスファー故障の致命的な弱点
  • 欧州車特有の天井垂れがもたらす資産価値の低下

供給過多による需要と供給の不均衡な市場

カイエンがこれほどまでに安価に取引される背景には、ポルシェというブランドの戦略的な成功が大きく関わっています。かつてポルシェといえば、911に代表されるような純粋なスポーツカーを少量生産する玄人好みのメーカーでしたが、2002年に投入されたカイエンはその常識を根底から覆しました。

世界的なSUVブームの波に乗り、ポルシェ史上最高の販売台数を記録し続けたことで、市場には膨大な数の個体が供給されることになったのです。

高級SUVという「消耗品」としての側面

ポルシェ・カイエンの流通量が多く、需要に対して供給が過多であるため中古価格が下落することを示すグラフ

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スポーツカーである911などは趣味性が高く、ガレージで大切に保管されることも多いのですが、カイエンは「日常の道具」として使われるケースが大半です。買い物やレジャー、子供の送り迎えなど、走行距離が伸びやすい環境で使用されるため、中古車市場に流れ込む個体の多くは相応の「使い込まれた感」を持っています。

新車時には1,000万円を軽く超えるステータスシンボルであっても、二次流通市場では実用車としての評価が優先されます。流通量が多ければ多いほど、希少性は失われ、価格競争が激化するのは市場原理の必然と言えるでしょう。

ブランドの普及とデザインの普遍性

また、ポルシェのデザインは非常に完成度が高く、どの世代も一目でポルシェとわかるアイコン性を備えています。しかし、その洗練されたスタイルゆえに「他メーカーがデザインを参考にする」といった現象も起きています。例えば、ホンダの新型プレリュードが発表された際、そのスタイリングがポルシェに似ていると話題になりました。

こうした議論については、プレリュードはポルシェのパクリ?デザインの真相とホンダの意図という記事で深掘りしていますが、本家であるポルシェのデザインがそれだけ普遍的で価値があることの証明でもあります。とはいえ、市場にこれだけ多くのカイエンが溢れてしまうと、「いつでも買える車」という認識が強まり、価格を下げなければ買い手がつかない状況が生まれてしまうのです。

958後期型と比較して前期型が値崩れする背景

カイエンの2代目にあたる958型は、2010年から2018年まで生産された非常に人気の高いモデルですが、その中でも2014年を境にした「前期モデル」と「後期モデル」では、中古車市場での扱いが天と地ほど異なります。私たちが現場で査定や整備を行っていても、この世代交代による価値の落差は非常に顕著に感じられます。

後期型は外装のリファインだけでなく、パワートレインの大幅な見直しが行われたことで、現代の基準でも十分に通用する性能を手に入れたからです。

テクノロジーの進化が旧型を突き放す

後期モデルでは、フロントマスクがシャープになり、テールレンズも立体的な造形に進化しました。しかし、最大の変更点は中身です。前期型のV8自然吸気エンジンから、効率の良いV6ツインターボなどへのダウンサイジング化が進み、燃費や信頼性が向上しました。

これにより、多くのユーザーが「多少無理をしてでも後期型」を求めるようになり、相対的に前期型の需要が冷え込んでしまったのです。中古車選びにおいて、見た目の新しさとメカニズムの安心感は最強の武器。それを持たない前期型は、価格で勝負するしか道が残されていないわけです。

958前期・後期の主な違い

  • 外装デザイン:後期はボンネット、フロントフェンダー、テールランプがより現代的に
  • エンジン:後期は高効率なターボエンジン中心のラインナップへ移行
  • 装備:インフォテインメントシステムのアップデートによる利便性の向上
ポルシェ・カイエン958型の前期と後期でデザイン、エンジン、装備の進化をまとめた比較スライド

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このように、次世代のクオリティが大幅に向上したことで、旧型となった前期モデルは一気に「古いポルシェ」というレッテルを貼られてしまいます。100万円台から狙えるカイエンの多くがこの958前期型であるのは、最新の性能を求める層から見放され、価格重視の層に向けた受け皿になっているからに他なりません。

この「世代の壁」を理解しておくことは、賢い中古車選びの第一歩になります。

故障しやすい場所と高額な修理費用のリスク

私のような整備士の視点から言わせてもらえば、中古のカイエンが安いのは「将来の修理代が価格から差し引かれている」からです。車両価格が200万円であっても、部品代や工賃は1,000万円の車と同等のプレミアム価格です。これは中古で購入する人にとって非常に重いリスクとなります。

中古車市場の価格は非常に合理的で、次にいつ大きな故障が起きるかわからないという「不安要素」がダイレクトに値札に反映されているのです。

高級車パーツの供給体制とコスト

ポルシェの純正パーツは非常に高品質ですが、その分コストも一級品です。例えば、ちょっとしたセンサーの不具合やブレーキ周りのリフレッシュだけでも、国産車の数倍の費用がかかることは珍しくありません。また、ポルシェ特有の構造ゆえに、一般的なカー用品店では作業を断られることも多く、正規ディーラーや専門店での重整備が必要になります。

これに伴う高い工賃が、オーナーに重くのしかかります。車両が古くなればなるほど、これらパーツの寿命が同時にやってくるため、中古価格は必然的に暴落するのです。

トランスミッションの不安とメンテナンス

特に大排気量でハイパワーなカイエンを支えるトランスミッションの負担は相当なものです。958型ではトルコン式の8速AT(ティプトロニックS)が採用されていますが、年式が進むとシフトショックなどの違和感が出始めることも。

ポルシェといえばPDKというイメージも強いですが、その耐久性についてはポルシェのpdkの耐久性の真実を現役整備士が徹底解説!という記事で解説している通り、複雑な機構ゆえに一度壊れると莫大な修理費がかかるのは共通の悩みです。

カイエンのATも例外ではなく、バルブボディの清掃やATF交換といった予防整備を怠ると、最悪の場合はミッション載せ替えという致命的な状況に陥ります。こうした潜在的な高額修理リスクを抱えている個体が多いことが、中古相場を押し下げる「重石」となっているのは間違いありません。

冷却水漏れやトランスファー故障の致命的な弱点

カイエンを中古で購入する上で、避けて通ることができない「鬼門」がいくつか存在します。その代表格が冷却系の水漏れと、駆動系のトランスファー故障です。これらはカイエン特有の構造的な持病と言っても過言ではなく、私たちが中古車を点検する際も真っ先に確認するポイントです。

これらのトラブルが厄介なのは、予兆なく突然発生し、しかも修理代が非常に高額になる点にあります。

水漏れが招くオーバーヒートの恐怖

特に初代(955/957)や2代目(958)のV8エンジン車で頻発するのが、エンジンVバンクの間を通るクーラントパイプの破損です。初期の設計では樹脂製パーツが使われており、エンジンの熱で硬化してバキバキに割れてしまうのです。冷却水が漏れれば当然オーバーヒートのリスクが高まり、最悪の場合はエンジンそのものを壊してしまいます。

これをアルミ製の対策品に交換するには、エンジン上部の補機類をすべて取り外す必要があり、その工賃は目を剥くような金額になります。対策済みかどうかが、その車両の価値を大きく左右するのです。

カイエン二大弱点の修理費シミュレーション

カイエンの冷却水漏れやトランスファー故障など、代表的な不具合とその高額な修理代を一覧化した画像

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  • 冷却水漏れ修理:15万円〜35万円(ホース、ポンプ等含む)
  • トランスファー交換:30万円〜55万円(アッセンブリー交換)

958型の宿命「トランスファー・ジャダー」

また、2代目カイエンで非常に多いのが、トランスファーケースの不具合です。低速域での加速や旋回時に、車体下部から「ガガガッ」という不快な振動(ジャダー)が発生します。これは内部の多板クラッチの摩耗や制御系のトラブルが原因ですが、基本的にディーラーでは丸ごと交換対応となります。

走行距離が短くても発生することがあり、ポルシェ社が一部保証延長を行っていた時期もありましたが、中古車として購入する場合は保証が切れていることが大半。こうした爆弾を抱えたままの車両が市場に安く流れている現実は、購入前に絶対に知っておくべき事実です。

欧州車特有の天井垂れがもたらす資産価値の低下

「走る・曲がる・止まる」という車の基本性能に関わる部分だけでなく、車内のクオリティ、特に内装の劣化も中古カイエンの安さに拍車をかけています。欧州車、特にドイツ車を日本で所有する際に最も頭を悩ませるのが、天井の内張りが剥がれ落ちてくる「天井垂れ」の現象です。

これはポルシェに限らず、BMWやフォルクスワーゲンでもよく見られますが、カイエンのような高級SUVでこれが発生すると、その資産価値は一気に目減りしてしまいます。

日本の気候という名の天敵

天井の生地とルーフパネルを固定しているウレタン接着剤は、日本の高温多湿な夏に耐えられるようには設計されていません。時間が経つと接着剤が加水分解を起こし、オレンジ色の粉状になってボロボロと剥がれ始めます。最初はルームランプの周りやサンバイザーの付け根から浮き始め、最終的には天井全体の生地がダルダルに垂れ下がり、後方視界を妨げるほどになります。

こうなると、車内は一気に「ボロい中古車」という印象に変わり、どれだけ外装が綺麗でも高値で売ることは不可能になります。

内装の張り替え修理は、専門の職人による手作業が必要なため、約10万円〜15万円ほどの費用がかかります。中古車販売店も、このコストをかけてまで完璧に直すよりは、その分価格を下げて「現状渡し」として販売することを選びがちです。ユーザーにとっても、せっかくのポルシェで天井が垂れているのは我慢しがたい不快感。

こうした目に見える劣化箇所が放置されている個体が激安価格の主役となっているわけです。車内に入った瞬間のあの特有の「垂れ下がった空気感」は、中古カイエン選びにおいて非常に強力なネガティブ要素として機能しています。

ポルシェのカイエンの中古が安い理由と維持費の現実

  • 燃費の悪さと大排気量車にかかる自動車税の負担
  • 認定中古車の保証が安心を買うための最適な選択肢
  • 整備記録簿で対策済みの個体を見極める選び方のコツ
  • 一般中古車店での購入に潜む現状販売のリスク
  • 車両本体価格に予備整備費を上乗せすべき根拠
  • よくある質問
  • ポルシェのカイエンの中古が安い理由を正しく理解する

燃費の悪さと大排気量車にかかる自動車税の負担

車両本体が安く手に入るようになっても、日本という国で「大排気量の重量級SUV」を維持することの厳しさは変わりません。中古カイエンが安い理由の大きな一つに、このランニングコストの高さがあります。まず多くのオーナーが悲鳴を上げるのが、毎年5月に届く自動車税の通知です。排気量4.5Lを超えるモデルであれば、その税額は年間88,000円。

さらに初度登録から13年が経過した古い個体には、約10万円もの重課税がのしかかります。

維持費を左右する税制の壁

カイエンの自動車税、重量税、ハイオクガソリン代など年間の固定費を合計したコストチャート

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これに加えて、2.5トンに迫る車重は車検時の重量税も最高ランク。持っているだけでお金が消えていくこのシステムに、一般のサラリーマン層が手を出してはみたものの、維持しきれずに手放す…というサイクルが繰り返されています。

具体的な自動車税の仕組みについては、(出典:国土交通省『自動車税・自動車重量税のあらまし』)などで確認できますが、古い高級車に対する税制は決して優しくありません。燃費についても、ストップ&ゴーの多い日本の都市部ではリッター3km台も珍しくなく、満タンにするたびに2万円近いハイオクガソリン代が消えていきます。

こうした経済的な負担は、同じポルシェであっても小型なスポーツモデルとは比較にならないほど重いです。例えば、ケイマンのようなモデルであれば排気量も小さく、燃費も多少はマシ。所有の実態については、ポルシェのケイマンに乗る人の年収や維持費は?所有の実態を解説で触れていますが、カイエンはまさに「ヘビー級」の維持費が求められます。

この維持費のモンスターっぷりに恐れをなす人が多いため、中古相場は常に低空飛行を続け、安い価格帯で安定してしまうのです。

認定中古車の保証が安心を買うための最適な選択肢

中古カイエンの闇(リスク)をさんざん語ってきましたが、その不安を唯一払拭してくれるのが「ポルシェ認定中古車(Porsche Approved)」という存在です。正規ディーラーが自ら厳選し、徹底した整備を施して販売するこの車両たちは、価格こそ街の中古車店より数十万円から百万円以上高いことがありますが、その価値は「安心」という目に見えない保険料にあります。

111項目の厳格なチェックと保証の威力

111項目の点検と走行距離無制限保証など、ポルシェ認定中古車の安心感を示す図解

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認定中古車として認められるためには、ポルシェ本社が定める111項目に及ぶ点検をクリアし、必要な整備はすべて純正パーツで行われている必要があります。そして何より最強なのが、最長15年まで延長可能な「走行距離無制限の保証」です。トランスファーの故障や電装系のトラブルなど、カイエンが抱える高額修理のリスクを、この保証一つですべてカバーできるのです。

これは単なる「故障時の無料修理」という意味以上の、精神的な安寧を提供してくれます。

もちろん、認定中古車を買えるだけの経済力も必要ですが、それは何もGT3のような超高性能モデルを維持するほどの年収(ポルシェGT3を買える人の年収は?購入条件や維持費を徹底解説を参照)が必須というわけではありません。しかし、「安さ」よりも「継続して乗れること」を優先する賢いユーザーは、最初から認定中古車を選びます。

中古相場に並ぶ激安車は、こうした「認定落ち」の個体であることが多く、それが結果として一般市場の価格を下げ、認定中古車との二極化を招いているのです。長く付き合うつもりなら、認定中古車は最も近道であり、最終的な出費を抑える選択肢になる可能性が高いですよ。

整備記録簿で対策済みの個体を見極める選び方のコツ

ディーラー以外の店舗で安いカイエンを探すなら、あなたを救う唯一の書類は「整備記録簿(サービスブック)」です。私はこれまで数え切れないほどのポルシェを診てきましたが、記録簿が充実している車と、そうでない車では、その後の寿命が明らかに違います。

記録簿は単なる車検の履歴ではなく、その個体が過去にどのような「外科手術(重整備)」を受けてきたかを示すカルテなのです。

「対策済み」という言葉の魔法

記録簿をチェックする際、最も注視すべきは「弱点が克服されているか」という点です。例えば、水回りのホースやポンプの交換、トランスファーの載せ替え、エアサスコンプレッサーの修理。これらが過去5年以内に行われていれば、購入後にあなたがその費用を負担するリスクが激減します。

逆に、走行距離が少なくても記録簿が真っ白な個体は、これからすべての爆弾が爆発するのを待っているだけの状態。「走行距離が短いから安心」という国産車的な考え方は、中古カイエンには通用しません。

整備記録簿のここを見ろ!

過去の整備記録で水回りやトランスファーの対策が済んでいるかを確認するためのチェックリスト

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  • 冷却系パーツ交換歴:エンジンの致命傷を防ぐ最重要項目
  • ATF・デフオイル交換履歴:駆動系のコンディションを維持できているか
  • 入庫先のショップ名:ポルシェ専門店やディーラーで継続整備されているか

前のオーナーがどれだけ愛着(とお金)を注いできたかが、この一冊に凝縮されています。中古のカイエンが安い理由の一つに、こうした適切なメンテナンスが途絶えてしまった車両が多いために、不安材料として叩かれている面があります。記録簿が分厚ければ、それは安さの不安を打ち消す最強の証明書になります。

逆に、記録簿のない激安車は、どんなに外見が綺麗でも手を出さないのが整備士としての忠告です。

一般中古車店での購入に潜む現状販売のリスク

街の中古車店、特に輸入車を専門としていない店舗の片隅に並んでいる激安カイエンには注意が必要です。こうした店舗では、オークションから安く仕入れた車両を、ろくに整備もせずに「現状販売(ノークレーム・ノーリターン)」に近い形で売り出すことが珍しくありません。店側もポルシェ特有の持病を把握しておらず、単純に「年式と距離」だけで価格を決めているからです。

「走れる」と「整備されている」の大きな違い

一般的な整備工場では、車検に通るための「灯火類のチェック」や「オイル漏れの有無」は確認できても、専用テスター(PIWIS)でしか読み取れない内部エラーや、トランスファーの初期症状を見落とすことが多々あります。納車後、自宅への帰り道でチェックランプが点灯し、店に連絡しても「現状販売ですから」と突き放される…そんな悲劇を何度も見てきました。

ポルシェは高度な電子デバイスの塊。一般的なSUVと同じ感覚で扱うことは不可能なのです。

安く売られている個体の中には、前のオーナーがディーラーで「次の車検で80万円かかります」と宣告され、修理を諦めて手放したものが山ほどあります。それを安く仕入れた店が、中身を隠して(あるいは知らずに)店頭に並べている。これが激安相場の残酷な裏側です。

輸入車に詳しくない店で安く買うのは、不発弾処理を素人が行うようなもの。もしそこから買うなら、購入後に信頼できる専門店へ持ち込んで、数十万円規模のリフレッシュ整備を行うことが前提となります。最終的な判断は専門家に相談することを強く推奨します。

車両本体価格に予備整備費を上乗せすべき根拠

私がお客様から「中古カイエンの購入予算」について相談を受ける際、必ず伝えるのが「車両価格+100万円」という魔法の数式です。例えば、150万円の激安カイエンを見つけたとしても、あなたの予算が150万円ぽっきりなら、悪いことは言いません、購入はやめておきましょう。その150万円は、あくまで「ポルシェという名の鉄の塊」を手に入れるための入場料に過ぎないからです。

なぜ「100万円」もの余裕が必要なのか?

中古の、特に安い部類のカイエンは、ほぼ確実に「後回しにされた整備項目」を抱えています。タイヤの溝が少ない、バッテリーが弱っている、油脂類が劣化している。これらを一通りポルシェ基準でリフレッシュするだけで、あっという間に20万円〜30万円は消えます。

さらに、半年以内に発生するかもしれない突発的な電子トラブルや、先ほど挙げた持病のケアを考えれば、50万円から100万円の「自由学費(予備費)」がないと、ポルシェライフはすぐに破綻します。

購入直後の予備費使い道シミュレーション
費用の種類 金額目安 内容
必須リフレッシュ 約300,000円 タイヤ、バッテリー、全油脂類の交換
持病の予防整備 約400,000円 ウォーターポンプ、コイル、ブッシュ類
突発的な修理用 約300,000円 センサーエラーやマイナートラブルへの備え
車両本体価格だけでなく、購入後のリフレッシュ整備費100万円を予備費として持つべきことを示す予算構成図

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この予備費を準備できている人にとって、激安カイエンは「お得にベース車を手に入れ、自分の手で新車時の輝きを取り戻す」という非常にクリエイティブで楽しい遊びになります。しかし、予備費がない人にとっては、ローン返済と修理代のダブルパンチに苦しむ地獄の始まりです。

本体が安い理由を逆手に取り、浮いた予算を迷わず整備に回せる。そんな経済的な余裕と覚悟がある人だけが、真のポルシェオーナーとして誇り高く走り続けられるのです。

よくある質問

Q:新車価格1,000万円超のカイエンが、なぜ中古だと100万円台で買えるのですか?

A:大量生産による供給過多に加え、高額な修理リスクや維持費といった「購入後の負債」を市場が予測し、あらかじめ車両価格から差し引いているためです。

Q:カイエンの中古車で、特に注意すべき定番の故障箇所はどこですか?

A:V8モデルの「冷却水漏れ」と、958型に多い「トランスファーケース」の故障です。どちらも修理には30万〜50万円単位の高額費用がかかる「鬼門」です。

Q:古いカイエンを維持するのに、税金や燃料代はどのくらいかかりますか?

A:自動車税は年間約10万円(13年超)、燃費は街乗りでリッター3〜5km程度です。ハイオク満タン給油ごとに1.5万〜2万円、年間ガソリン代で50万円前後が目安となります。

Q:激安の中古カイエンを買って後悔しないための対策はありますか?

A:整備記録簿で弱点箇所が「対策済み」かを確認してください。また、車両価格に加えて100万円程度の「予備整備費」を予算として確保しておくことが重要です。

ポルシェのカイエンの中古が安い理由を正しく理解する

さて、ここまで読んでくださったあなたは、ポルシェのカイエンの中古が安い理由が、単なる「不人気」や「性能不足」ではないことを十分に理解されたはずです。中古市場は極めて冷徹で合理的です。大量に供給され、高額な維持費を要求し、時として牙を向く高額故障のリスク。これらすべてをマイナス査定として合算した結果が、あの驚きの低価格として表示されているのです。

しかし、誤解しないでいただきたいのは、その低価格は「ポルシェの価値がなくなった」ことを意味するのではないということです。適切にメンテナンスを施されたカイエンは、現代のどの高級SUVと比べても遜色のない、圧倒的なボディ剛性と胸のすくような走行性能を維持しています。

安さの裏にある「整備という名の後払いコスト」を理解し、それを戦略的にコントロールできる人にとって、これほどコストパフォーマンスの高い車は他にありません。

この記事が、あなたの不安を解消し、冷静な判断を下すための一助となれば幸いです。夢のカイエン生活を成功させるカギは、安さに飛びつく瞬発力ではなく、安さの理由を飲み込む包容力にあります。正確な情報は信頼できるショップや公式サイトで確認し、ぜひ最高の相棒を見つけてください。

もしあなたがそのハードルを越えられたなら、その先には他では決して味わえない「ポルシェのある人生」が待っていますよ。応援しています!

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神崎悠真

神崎 悠真(1級自動車整備士)                       元大手メーカー勤務。現在は高級車を中心に扱う現役のメカニック兼、自動車検査員です。このブログでは、カタログのスペック表には載っていない**「故障リスク」や「本当の資産価値」**について、整備士の視点から忖度なしで解説します。                                  車選びで失敗したくない方は、ぜひ私の経歴をご覧ください。                                             資格一覧                                         自動車整備士一級、自動車検査員、中古自動車査定員、低圧電気取扱者、大型自動車第一種運転免許、中型自動車第一種運転免許、準中型自動車第一種運転免許、普通自動車第一種運転免許、牽引自動車第一種運転免許証、甲種危険物取扱者、ガス溶接技能講習修了証、全工協主催 基礎製図検定・機械製図検定、全工協主催 情報技術検定、フォークリフト運転技能講習修了証(最大荷重1t以上)、半自動溶接適格性証明書専門級、玉掛け技能講習修了証、床上操作式クレーン運転技能講習修了証(つり上荷重5t以上)、産業車両整備技能士特急、ジュニアマイスターゴールド認定

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